中国語を学んでいるとしぜんと歴史や文化、そして唐詩にも関心がいきます。 せっかくなので原語で幾首か暗唱でもしてみようかとあれこれ選んでみたが どの詩も美しすぎてなにか馴染めない。 そんな折、図書館児童書コーナーで見つけた「奥平卓訳」のこの本。 唐詩が急に身近に感じられました。 |
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炭売りのじいさん 「白楽天」 炭売りのじいさん 終南山でまきをきり 炭をやく 顔は灰にまみれ 煙にすすけ 鬢のしらがは黄ばみ 手のゆびは黒くそまっている 炭を売ってかせいだかねでできることは やっと身をつつむ布ぎれと食うものを買うだけ かわいそうに 自分はひとえ一枚でふるえながら 炭が値下がりしないよう もっと寒くなってほしいとねがう うれしや都のそとは 夜来の雪が一尺つもり 夜があけて 炭を車につみ 牛にひかせてでかけたものの こおった轍に車輪をとられ ゆきなずむうち いつか日はたかく 牛はくたびれ じいさんは腹が減る ようやく市場にたどりついて ぬかるみのなかでひと息いれた そこへ馬をのりつけたふたりの男 白と黄色の装束は宮中の役人のしるし 手に書きつけをふりまわし 天子の命じゃといいながら 車をむけかえ 牛をしかって 宮殿へとひいてゆく 車いっぱいの炭 千斤をこえる炭なのに 天子の使いにひきたてられては くやしいけれど とりかえすすべもない 役人め 半匹のあかい紗と一丈ぽっちのあや絹を牛の角にむすびつけて 炭代がわりにとっておけだと |
当時、宮中で必要なものを買い入れるために、宮市という機関がありました。ここの係りの役人は長安の市内を歩いては、
めぼしいものを見つけると、天子の命だといって、むちゃくちゃに安い値で買ったり、時にはタダで取り上げたりしていました。
以上、本文より。